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名古屋高等裁判所 昭和57年(ネ)473号 判決 1984年9月27日

控訴人

藤沢吉伸

右訴訟代理人

加藤茂

被控訴人

森得一

右訴訟代理人

濱田盛十

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所も、原判決の認容した被控訴人の本訴請求部分は正当として認容すべきものと判断するが、その理由は以下に付加・訂正・削除するほかは原判決理由と同一であるから、これを引用する。

1  原判決六枚目裏四行目から五行目にかけての「みなされる」を「みなす」と、同七行目の「原告本人尋問(第一ないし第三回)」を「原審(第一ないし第三回)及び当審における被控訴人本人尋問」と、同九行目から同一〇行目にかけての「被告本人尋問(第一、第二回)」を「原審(第一、第二回)及び当審における控訴人本人尋問」とそれぞれ改める。

2  同七枚目表一行目「原」から同二行目「弁論の全趣旨」までを「原審(第一ないし第三回)及び当審における被控訴人本人尋問の結果」と、同裏八行目から九行目にかけての「あるが、もつとも」を「、ただ」とそれぞれ改める。

3  同八枚目表七行目の「本件」の次に「各」を加え、同末行の「もつとも、」の次に「白地手形は補充権の適法な行使によりこれを完成してはじめてその記載内容に従つた権利行使をすることが認められるものであるから、」を加え、同裏六行目の「本件各手形」を「本件各約束手形」と、同七行目から同八行目「う」までを「に沿う原審(第一、第二回)及び当審における控訴人本人の供述」と、同一〇行目の「原告本人尋問(第一、第二回)」を「原審(第一ないし第三回)及び当審における被控訴人本人尋問」とそれぞれ改める。

4  同九枚目表四行目から五行目にかけての「原告本人尋問(第一、第二回)」を「原審(第一ないし第三回)及び当審における被控訴人本人尋問」と、同九行目の「推認さ」を「認めら」とそれぞれ改め、同九行目の次に改行して、

「五、そこで本件各手形債権の時効による消滅及び右消滅時効の中断に関する当事者の主張について判断する。

本件各手形については、それぞれの満期から三年を経過する前である原判決別紙手形目録(一)(1)の為替手形金及び同目録(二)の本件各約束手形金については昭和五一年五月二九日に、同目録(一)(2)(3)の為替手形金については同年八月三〇日に、被控訴人が、それぞれ鳥羽簡易裁判所に対し支払命令の申立をし、右各申立に相応して発せられた支払命令に対する控訴人の異議申立により、これらが本件訴訟手続に移行したことは本件記録に徴し明らかであり、被控訴人が右各支払命令の申立後、本件各為替手形の支払人欄・振出日・引受日の記載内容並びに本件各約束手形の振出日の記載内容を訂正した経緯は前認定のとおり(請求原因3の事実)である。

ところで、白地手形の所持人は、その補充権に基づいて白地部分を補充して完成手形とすることなしに、有効な手形の所持人としての手形上の権利を行使することはできないけれども、満期の記載のある白地手形の所持人が、白地部分を補充しないまま、手形金請求の訴えを提起した場合であつても、右が満期から三年以内に提訴されているかぎり、右手形上の権利の時効は右訴え提起の時に中断され、所持人は満期から三年を経過した後も、事実審の口頭弁論終結時まで白地を補充して手形を完成させることができる(最高裁大法廷昭和四一年一一月二日判決、民集二〇巻九号一六七四頁、同昭和四五年一一月一一日判決、民集二四巻一二号一八七六頁参照)し、また白地手形の所持人は、一旦、白地部分を誤り補充して手形金請求訴訟を提起しても、事実審の口頭弁論終結時に至るまでは、右誤記を訂正することが許されるものと解するのが相当であつて、右の理は、本件各為替手形の場合のように白地為替手形の所持人がその支払人欄に引受人の氏名と異なる者の氏名を誤記補充したため、外観上、無効な手形が作出され、所持人が右手形に基づいて手形金請求訴訟に及んだ場合にも妥当するというべきである。

以上に説示したところによると、本件各為替手形の引受人であり、本件各約束手形の振出人である控訴人に対する被控訴人の手形上の権利の消滅時効は、前示各支払命令の申立によつて中断したものといわねばならない。」

と加え、同一〇行目の「五」を「六」と改める。

二以上のとおりであつて、被控訴人の本訴請求中原判決の認容した部分は理由があり、原判決は結局相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(可知鴻平 石川哲男 鷺岡康雄)

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